ニューヨーク公演において劇団オリオンが上演する2作品「マリアの祈り」と「The Firefighters」に出演している、楠かずみさんへのインタビューをお伝えします。

役を演じる上で大切にしていることはありますか?


私の演じている「マリアの祈り」のリエ、「The Firefighters」の梨恵、名前の同じこの二人には共通点があります。それは神様からのメッセージを受け取ることができる、ということです。私にはそういう力はありませんので、初めはどうやって演じたらいいのか苦労することもありました。その一方、台本を読んだだけでも自然と涙が出てしまう、という場面があることに驚きました。その場面は「マリアの祈り」でも「The Firefighters」でも同じで、被爆された方々やテロの犠牲になった方々、または他の登場人物たちに、ただただひたすらに心を寄せていく、という場面です。
どちらのりえも同じように、たとえ自分がそのために傷ついたり、不利な立場に立つことになったり、それこそ命を落としてしまいそうな程のことがあったとしても、そんなことはひとつも気にせずただもう無我夢中で目の前の人々を助けたい! 何とかしてあげたい! と一心不乱に叫び、祈り、涙します。二人のりえの愛の深さにはかなわないかもしれないけれど、人として生まれながらに持っているそういった、人々の幸せを願い、あらゆる生命を愛する力、優しさは、きっとこの私の中にもあるはず。自分の中にあるその力に最大限フォーカスし、その力を信じ切ることによって、神様の言葉を受け取ることができるというこの役柄に、少しでも近づけるように…と、まさに祈りながら演じています。




今年は1月から神奈川、東京、広島と、IAPGでは公演が続いて大変だったと思います。ご自身を支えているのは何ですか?


仲間です。仲間が大好きなのです(笑)。公演を終えたその日、夢の中でも仲間と会っているんですよ。夢の中までも仲間と一緒にいたいのでしょうかね(笑)。手前味噌になりますが、メンバーの一人ひとり、本当に尊敬するほど身も心も捧げてこの活動に打ち込んでいます。脚本の中で文字で表現されているものを、舞台表現という立体的な形にすることは、実に大変な作業です。役者はもちろん音響や照明など様々なスタッフの技術的な能力も必要ですので、本格的な演劇を上演しようと思ったら、週一回の練習ではとてもじゃないけど無理でしょう!私が当初この劇団に関わることになった時には正直そう思いました。それをカバーしているのはメンバー一人ひとりの努力に他なりません。普段は会社員だったり、学生だったり、主婦だったりと、自主練習の時間を取るのは大変だと思うのに、毎週の練習では確実に自分の課題をクリアして上達してきています。ああこれは家で相当練習しているのだな、仕事も子育てもあるのに大変だったろうなといつも驚き感動し、その仲間達のひたむきな姿に多くのことを学ばせていただいています。
たくさんの人がいて、それぞれの性格や生きている環境や考え方などが違っている中で、ひとつのものを作り上げるのには当然ながら、摩擦がないとはいえないでしょう。でも私たちを支えているのは、創設者・稲森紀子の愛と平和への願いを引き継ぎ、それを世界中の人々に伝えて行かなくてはならないという強い思いです。その志と情熱で、常にひとつになっているのです。私たちはアマチュアなのでプロ集団のように技術的には十分とは言えないところもあるかもしれません。でも演劇は総合芸術ですから、その志と情熱から来る一体感が、舞台の感動につながっていることは間違いないと思います。




今年ももうすぐニューヨーク公演が近づいてきましたが、過去のニューヨーク公演での思い出話があれば、お聞かせください。


2014年ニューヨーク公演3日目。一日のうちに「マリアの祈り」と「The Firefighters」2作品を上演するというハードな日でした。正直、慣れない英語公演に時差ボケも加わって、不安と緊張で心も体も極限状態でした。出番を待っている間、舞台袖にあるベンチに座っていると、あまりの緊張になんと眠ってしまうのです!座っているからいけないんだと立ち上がってセリフを言ってみたりもしたのですが、出番がどんどん近づいているのに、眠気はどんどん増し、集中したくてもその力が出てきません。
そこで舞台袖に行って舞台の熱を感じることにしました。仲間達の熱演を見ているうちに、戦っているのは自分一人じゃないんだ、全員が全身全霊で戦っているんだ…と自然と涙が出てきました。それで一気に作品の中にある祈りの思いに入ることができたのです。それまで自分のことだけに囚われてザワザワしていた心がシーンと澄み渡り、無事に自分の役目を果たすことができました。でもかなりヒヤヒヤしましたが(汗)。それ以後は自分の出番は後半ですが、なるべく袖から舞台上の仲間の演技を見て、集中力を保つようにしています。いつでも自分を助けてくれるのは仲間ですから。




大切にしている台詞はありますか?


たくさんありすぎて選べないです!!

「The Firefighters」の後半、不思議な力を持つ梨恵は、すでに亡くなっている911ニューヨークテロ事件における実際の実行犯を目撃してしまう、というシーンがあります。彼の言葉を代弁して梨恵は言います。「許してくれ! 知らなかったんだ…。」私は涙なくしてその台詞を言うことができません。神の名のもとに未だ世界中でいがみ合っている人々は、どの宗教の神も本来は同じ思いであり、私たちを創り育まれている神々が、どれだけの思いで私たち一人ひとりを愛し、神の子たちが互いに愛し合い幸せになることを望んでいるかを忘れているのだ。そう梨恵は神の思いを代弁します。さて、その物語の中に登場する遺族や残された消防士たちは、テロの実行犯を許すことができるのでしょうか? この大切な母なる地球の上で、生かされ育まれている私たち地球人が、本当に大切にしなければならいことは何なのでしょうか? 私たちはきっと知っていると思うのです。そのテロの首謀者だってきっと心の奥深くでは知っているはずだと私は思います。なぜなら…おっとこれ以上は言いません。ぜひ劇場に足をお運びいただき、感じでいただければと思います。

今年5月、アメリカ大統領のオバマ氏が被爆地広島を訪問されました。その時に述べられたスピーチから、オバマ氏の思いは、私たちIAPGの「愛と平和の祈り」の思いと同じだということを、私は感じました。アメリカのニューヨークでもきっと、同じ思いを共有してくださる方がたくさん待っていてくれると思って、心を込めてこの舞台をお届けしたいと思っています。どうぞ楽しみにしていてください。





創設者 稲森紀子より


男性方にお願いしたいです。私たち女性たちは、愛する子どもたちとささやかな平和な未来を築ける社会が欲しいのです。国が違えど民族が違えど、愛する夫や息子や恋人に、人殺しをさせたい女性たちなどいないと思います。愛する家族や友人たちと幸せに暮らす未来を、次の時代を生きる子どもたちに残していけるような、私たち人類でありたいと思うのです。

稲森紀子「愛と平和の祈り」メッセージ集より





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