世界の平和に向けて


皆様ご存じのとおり、日本はこのたび東日本大震災という未曽有の災害を受けました。それは地震国に育った私たち日本人でも驚き、ショックを受けるものでした。しかし、何より驚いたことは、日本人がこんなに人の幸せや不幸に涙を流して必死になる者たちであったのだ、ということです。

日本人は戦後の復興からがむしゃらに駆け抜けてきて、エコノミックアニマルと言われ、宗教も否定し、世界の中でも、経済は豊かだけれど精神性は劣っていると思われていたと思います。事実そのとおりだったと思います。自分たちのことで精一杯で、他人の幸せや不幸まで考える余裕がなかったのだと思います。

一方、日本人は古来より秩序と礼節を重んじ、調和を大切にする民族であると言われていました。今回、それがわかったように思います。日本は今、ひとつの家族になっています。他人ではなく、みな家族のように悲しみも喜びも分かち合い、復興に向けてがんばっています。親を亡くした子どもや、子どもを亡くした親も、もはや他人の話ではないのです。

そしてまた驚いたのは、世界中から励ましのメッセージや支援物資やお金が届いたことです。日本人もボランティアという習慣があまりないのに、たくさんの人が駆けつけました。世界中からもボランティアが集まり、必死に救助してくださる姿に胸が熱くなりました。ついその前まで海や領土問題でののしり合っていたことが嘘のようです。

私は常々、子どもたちのために世界平和をどうしたら実現できるか考えてきました。それは宇宙船地球号に乗り合わせた家族であり、仲間であるという思いに世界中の人びとがなれたなら、世界平和も単なる夢ではないと思います。

(稲森紀子国連スピーチより一部抜粋)